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    2017-09

    台風の日曜日 - 2017.09.17 Sun


    台風18号が接近中…の割には全く静かな日曜日。
    もう鹿児島県に上陸したらしく、これから日本を縦断する予報だけど
    今はまだ全くの無風、雨なし。

    外は暗い森の湿った気配。窓を閉め切ってシャットアウトしてるとほんとに
    シーンと空気が止まってしまうけど、これが妙に気持ちが落ち着いて
    居心地悪くなくて。こころがペターっとして手だけが動いている、目的に
    向かって淡々と。そんな感じ。

    木工作家にもいろんな人がいて、いつも一定のテンションでコツコツ作るタイプの
    人なんかは、きっととても物作りに向いているのだ、僕などは、あれこれ気が多いし
    気分屋で熱中して勢いで体力の限り突っ走り、、、少なくとも良い職人ではない気がする、、
    まぁでも仕方ないね、きっと生まれつきの資質だから、、きっとそれなりの良さもあるさ、、、
    なーんてことが頭の中にぼんやり浮かんだりもして。

    でもね、やっぱり長いこと物作りをしていると、こんな落ち着いたテンションの日だってあるし、
    コツコツと仕事が進む時だって意外とあるのだ。
    職業ってすごいなと思う。毎日やってるうちに心も体つきも適応させてしまうんだなぁ。

    たぶん自然素材の手仕事ってみんなそうだと思うけど、
    木工の技術は素材である木の性質に対応しながら洗練されてきたということを、
    毎日木を切ったり削ったりしながらつくづく思う。
    例えば、組み立てるときのホゾと穴はキツめに作って叩き込むと繊維が圧縮されて組まれる
    からとてもしっかり接合される、とかね。これはキツ過ぎると割れちゃうので、よく木を見て
    ね、硬い木は組み入れる前にげんのうで叩いて圧縮してからするとか、樹種によって、また
    同じ丸太でも繊維の状況は場所ごとに違うので、本当に一つ一つの工程を木の状況に合わせて
    加減しながらやっていくことが要求されたりとか。

    確かに面倒な素材ではあるけど、そういった木の特性に合わせて完成した技術や、熟練した
    技術者が木を見て一瞬で特性を見抜く勘、あるいは美的センスが、一つひとつの木を見れない
    量産方式では決して作ることができない丈夫で長持ちする、そして美しい作品を作り出す
    ということは、まだまだ現実としてあると感じてる。
    事業化されて量産方式が持ち込まれて作られた木の家具は見たらすぐ分かるし、
    値段の安いものについては、5年後には間違いなく粗大ゴミになりそうな酷いものもよくあります。
    何十年もかかって育った木が、ほんと勿体無いよね。


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    セパレート飾り棚の上置きが倒れないよう、また上下の伸縮の差に対して動くように、送り蟻で
    接合することに。これはその下準備で電球の熱で雇い蟻の取り付けホゾを縮めているところ。
    このあと玄能で叩いてさらに縮めてから打ち込みます。それでちょうど良いキツさになるように
    作ってあるのだけど、こういう技術を普通に使ってるのって今や工房の家具作家たちくらいのもの
    だろうね。こんな木工の文化がこの先も引き継がれるように、そのためにはこの手間に見合った
    魅力のあるいい家具を作らないといけないってことだね。おーっし、がんばろっと。








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    9月。まだまだ暑いけどやっぱりもう夏とは違う… - 2017.09.09 Sat

    9月になったとたんに、一気に秋らしくなったように感じませんか?
    そうでない年もあるように思うので、今年はたまたまそうなのかなぁ。

    左手の手術後、まだ握力が元に戻らずもどかしいですが、いずれ回復すると
    検診では言われているので、焦らず淡々と気をつけながら製作を続けています。

    スピードダウンを補うべく工房に泊まり込んでの製作も週に何度か。

    夜なべをちょうど切りのいいところで終わらせずに、翌朝一番の作業を
    前夜の続きから始めたりするほうが、ちょうどいいウォーミングアップになる
    というのは、昔家具製作の会社で修行してた時先輩の職人さんたちから
    学んだちょっとした工夫。
    翌朝や休憩のあとなど、いきなり次の工程から始めるより勘違いや失敗が
    少なく能率的に次に進めるのです。やってみるとなるほどと思うことが、
    手を使うものづくりの仕事にはたくさんあるように思う。そういうのも
    一つひとつ、おもしろいなと感じるこの頃。




    この日の朝は日の出前に起き出して、鉋がけから始めました。
    まず刃を研いでからなんだけど、水に手を触れながら静かに集中していく
    のを感じて身体を動かしていくのは気持ちいいな。


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    支給された杉材でシェルフを製作中なのだけど、割れ、腐食、虫穴がもう
    たくさんあって補修だけで相当な時間がかかっちゃっています。
    これは接着剤と木の粉を練り合わせてパテを作って、穴を埋めているところ。
    補修はどうしたって目立ってしまうので、予め木使いを考えて木造りする工程で
    見えないところ、目立たないところにアラの部分を持っていくことが先ずは
    大事なんだけど、アラ対策じゃなくても木目の流れやバランスもあって、
    木取り工程は本当に時間がかかる。でもそこに時間をかけてあると、
    やっぱり出来上がったものの雰囲気が違う、、と思う。同じデザインのものを作ってもね。



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    これもまた別の仕事で作った杉材のドア。いい色の綺麗な柾目を接ぎ合せた無垢の板の建具。
    フレームで組んだものより木の存在感は、やはり圧倒的にこっちの方があると感じる。
    シンプルだけど気を使う部分が多くて時間がかかるし、材料も選ぶし、組んで作る建具よりも
    費用がかかることは多いんだけどね。


    ここはようやく完成が近づいた、地元材を使った家具や小物などの生活具を扱うお店の
    エントランス。もちろんこの杉材も取っ手の山桜も、三重県産の木。


    まだまだ年末までパンパンの製作予定。作って作って作りまくるよ。おっし。




    平和元年 - 2017.08.05 Sat


    2015年の7月にリリースされた元ちとせさんのアルバム『平和元年』。
    あれからこの時期になると毎年聴きたくなるのです。

    汗ポタポタの真夏の工房で蝉時雨のうねりと一体になるかのような元さんの歌声。

    眩しく輝く日本の夏。70年前に人々の暮らしの上に降り注いだのは、機銃掃射と爆弾だった。
    一瞬で消えてしまった多くの人々の日々の暮らし、青春、夢、恋、家族、幼い命、、、

    繰り返し聴いているうちに、このCDにはそんな沢山の魂が宿っていると感じるようになりました。

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    戦争はもちろん、全ての武力、暴力を捨て去ること。
    その実現に向かって行くことこそ人間の存在の理由なんだと。

    そのことを粘り強く、考え、学び、行動し続けることを、その魂たちは
    誓い直させてくれているように感じます。




    死んだ男の残したものは
    ひとりの妻とひとりの子ども
    他には何も残さなかった
    墓石ひとつ残さなかった

    死んだ女の残したものは
    しおれた花とひとりの子ども
    他には何も残さなかった
    着もの一枚残さなかった

    死んだ子どもの残したものは
    ねじれた脚と乾いた涙
    他には何も残さなかった
    思い出ひとつ残さなかった

    死んだ兵士の残したものは
    壊れた銃とゆがんだ地球
    他には何も残せなかった
    平和ひとつ残せなかった

    死んだ彼らの残したものは
    生きてるわたし生きてるあなた
    他には誰も残っていない
    他には誰も残っていない

    死んだ歴史の残したものは
    輝く今日とまたくる明日
    他には何も残っていない
    他には何も残っていない


    収録曲『死んだ男の残したものは』
    作詞:谷川俊太郎 作曲:武満徹










    山登り - 2017.06.27 Tue


    昨年暮れから続いている痺れを治すべく、
    六月初旬に左手の手術を受けて以来、
    目下のところ製作をしばらく休んでます。

    図面を書いたり、本を読んだり、端材の整理をしたり、デスクの資料を片付けたり、、、

    どうにも体が鈍ってきた頃にやっと糸を抜いてもらって、
    傷口ももう大丈夫になったので、思い切って旅に出ることに。




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    ローカル鉄道を使っての、のんびり列車の旅なんて本当に超久し振りのことです。


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    兵庫県から鳥取県へ、穏やかな初夏の日本海を眺めて着いたところは
    初めての鳥取県鳥取市。

    鳥取民藝美術館でバーナードリーチの鳥取での足跡を辿る。
    この美術館を作った郷土の偉人吉田璋也との交友など。
    日本の自然と人間の暮らしを愛した先人たち。



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    鳥取民藝美術館、たくみ工芸店、たくみ割烹店、と並びます。


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    知らない街をひとりぶらぶらするのは本当に楽しい。
    自分の日常を離れて、せっかくだから思い切り開放感に浸る。


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    近くにいる友人が車で拾いに来てくれて、一緒に大山へ向かう。
    兵庫の山村に移住してこれからの暮らしを模索している友人。
    その楽しく真剣な実践のあれこれを聞きながら。


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    偉大な大山の広大な裾野に広がる、美しい森を抜けていく。
    この辺りは欅や楢、松、杉の植林などの二次林。
    ブナ原生林はまだまだ先。とても楽しみ。


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    人間の営みもある。広々して寛大な大山の自然の中に。

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    車を降りて歩く。
    標高600メートルくらいの沢に出て頂上を望む。


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    ブナ原生林。
    数としては知らない木のほうがずっと多いが、
    ミズナラ、カエデ、ハンノキ、カツラ、杉など木工素材として馴染み深い木が
    姿も大きくてやっぱり目が行く。一本一本の存在感と全体の調和。
    素晴らし過ぎて胸が一杯になる。
    高度が上がるにつれブナの割合が増える。ナラはいなくなって、カエデが時々。


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    登山道が急峻になり遠景が見え始める。


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    下界という言葉が浮かぶ。ここは天上。


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    下で見上げていた北壁も間近に。


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    3時間半で最初の頂に到着。標高1,709メートル。
    この先の尾根縦走は危険が大きくて禁止されている。


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    ずっといたい気持ちになるけど、ここはイノシシもシカも人間も暮らせない場所。
    鳥たちの声を聴きながら、1時間ほどゆっくり過ごし、下山。
    ありがとうございました。また来させてください。


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    山里の朝。
    人が自然とともに暮らすことを思い出させてくれる場所。
    思い出して、そしてそれを実践することは、都会にいては出来ないし、
    山村に住むだけで出来るというものでも最早ない。どこまでするか、どこまで
    今の生活から、社会から離れるか。離れながらどう繋がって、何を届けられるのか。
    都会の自然志向の欺瞞が見え隠れする自分は中途半端だなと思う。
    普通にしていたら流されて分からなくなってしまう、気がつかないうちに。
    人間もその社会もきっと普通に考えている以上に狂っている。
    何をどうしたらいいのか。今やろうとしていることの中にあるもの。嘘か最善か。
    少なくともそれが見える場所までは戻らなけりゃ本当にもう危ないんだろうと思う。
    でも、(だから?)家具を作ってそれで出来ること、それはまだあるとは思っている。
    もちろんくだらない失敗に流れてしまうことも簡単に起きると。それくらいに
    思ってやらなければいけないと。


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    奈良オーガニックマーケット。
    出店中の友人木工家の展示。美しい木の道具たち。


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    都会の人間の暮らし。

    それに愛おしさを感じているから、自分は家具を作るのだということも。







    花森安治さんの言葉 - 2017.06.17 Sat

    きのう7~8月の展覧会DMの街配布をして最後のGOCYICAFEさんで休憩中、本棚にあった「花森安治のデザイン」をなんとなく手にとって読んでいると、彼がに大橋鎮子と初めてあったときに言った言葉が紹介されていた。女手一つで自分たち姉妹を女学校に行かせてくれた母親に孝行したいから、女性の役に立つ雑誌を出版したい、という彼女に答えて言った言葉だ。大政翼賛会が解散し太平洋戦争が終わった年のこと。

    …花森は、「君は親孝行だねぇ」と感心し、「ぼくには、もうおふくろはいないから、君の親孝行を手伝ってあげよう」と賛同した。そして、「ひとつ約束をしてほしい。もう二度と、こんな恐ろしい戦争をしない世の中にするためのものを僕は作りたい。一人一人が自分の暮らしを大切にしていたら、戦争にならなかったと思う」と語った。…

    安保法制、特定秘密保護法、共謀罪、、、ものづくりをしていても、ずっと心が落ち着かなかったけど、そんなときに自分にとってこれは本当に大きな言葉でした。この頃よく耳にする「政治とは日常の暮らしそのものだ」という言葉が自分にとって意味するところがやっと見えた気がした。
    この後、花森安治と大橋鎮子は1948年9月に「言論の自由を守り、紙面の美しさを保つために」広告をとらない「美しい暮しの手帖」を創刊します。

    …「まじめに自分の暮らしを考えてみるひとなら、誰だって、もう少し愉しく、もう少し美しく暮らしたいと思うに違いありません。より良いもの、より美しいものを求めるための切ないほどの工夫、それを私たちは、正しい意味の、おしゃれだと言いたいのです」…

    あれから69年。さて今、この先の世の中に必要だと自分が思う、より良いもの、より美しいもの、それを探しながら信じながら、ものづくりをしていくのが僕の暮らしであり、政治でもあったのだと思ったのでした。


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